ホームは3階で、2階にも道路が接続し、タクシーなどが客待ちしている。
しかし、2階の客待ちはモグリらしく、正しいタクシー乗り場は1階らしい。
改札階からエスカレーターで1階へと向かう。
北口と南口の両方で、タクシーが客引きをやっている。
さてどちらにしたものか迷ったが、近いほうへと向かっていく。
黄色の小型車が、ずらっと客待ちをしている。
案内のオバサンもいる。
安心して乗ろうとすると、定員が4人だという。
すると6人乗りの運転手が、俺の車なら1台でOKだと顔をだしてくる。
普通乗用車は定員4人だが、3列シートのミニバンは定員6人なのだ。
ではということで、ミニバンのタクシーにのる。
これがトヨタのカムリだった。
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台中駅のタクシー乗り場 |
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ホリデイ・インのホテルのバウチャーを見せても、ホテルがどこにあるか分からないようなのだ。
運転手は仲間に聞くが分からない。案内のオバサンも参加して、にぎやかな討論会になった。
すると運転手は分かったような顔をして、車を発車させた。
しかし、ちょっと走っただけで、車を停めてケイタイをとりだした。
そして、どこかに電話を繋いで、ケイタイをボクのほうへと手渡すのだ。
ケイタイからは流ちょうな日本語が流れてきた。
ボクはホリデイ・インというが、相手もホテルがどこにあるか分からない。
住所がローマ字で書いてあるので、アルファベットを読み上げるが、これが通じない。
運転手がアルファベット表記の住所を理解できないのだ。
いつの間にかタクシーは走り始めたが、運転手は走りながらケイタイをかけまくっている。
何度かケイタイでやり取りしているうちに、ホテルの場所が分かったらしい。
おとなしくなった。
運転手は、仲間の運転手に聞いたからOKだという。
しかし、今考えてみると、互いに言葉がまったく通じないのに、なぜ仲間の運転手に聞いたと、ボクが理解できたのだろうか。
不思議である。
運転手はもう大丈夫という顔をして運転しているが、ボクたちは初めての街で不安になってきた。
こちらが道を知らないことに、遠回りしているんじゃないだろうか、と疑心暗鬼が芽生えた頃、ホテルの看板が見えてきた。
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ホリデイ・インの正面玄関 |
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バスルームからシャワーブースを見る |
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建物全体がホテルではなく、3〜6階までと11〜12階がホテルで、他の階はアウトレット店になっている。
普通のビルと変わらない外観である。
たしかに地味なホテルである。
小さなホテルだから分からなかったのだろうか。
しかし、建物の上のほうには、ホリデイ・インというサインも出ているのだから、運転手なら知っていて欲しかった。
メーターは450元を指している。
建物外観がホテルらしくないので、一応フロントを確認するために建物の中に入ってみた。
小さなロビーの先にフロントがあり、男女2人の若者が迎えてくれた。
しかも女性のほうは、きれいな日本語を話す。
ヤレ安心である。
新幹線の台中駅からここまで、タクシーの値段を聞くと、250元くらいだという。
やっぱりと思って、彼女に交渉してもらう。
すると、こちらの指示が悪いからだ。
メーターどおりに払えと運転手はいう。
1元は約3.3円である。
450元は約1500円。
5人も乗って、かなり走ったから、仕方ないのかと諦める。
まあ無事にホテルに到着である。
前2回の旅行では、飛行場からホテルまで一直線にきたので、こんな心配はなかった。
でも、これが本当の旅行だろうと、また勇気がわいてくるのだった。
バウチャーを見せてチェックイン。
シースルーのエレベーターは道路側にあって、街を見下ろしながら登っていく。
我々の部屋は、11階だった。
エレベーターを降りるとロビー。
その向こうには吹き抜けが見える。
この建物は、1階のレストランを中心にロの字になっており、中央が最上階まで吹き抜けている。
外部に面した側には、もちろん部屋があるが、吹き抜けに面しても部屋が取られている。
この吹き抜けのために、全室に自然光が入る設計になっている。
そして、吹き抜け側にはベランダのような廊下が廻っており、二方向避難がはかられている。
とても良い設計だが、我々の部屋は吹き抜けに面している。
反対側から室内が見えてしまうので、窓のカーテンが開けられないのだ。
これは仕方ないが、及第点ではない。
日本のホテルに比べれば、天井は高いし清潔で充分な設えである。
アメリカ式の合理主義が徹底している。
しかし、スモーク・ガラスで囲まれたバスルームには浴槽がない。
トイレと洗面台、それにシャワーがあるだけだ。
それよりも驚いたのは、バスルームに入る扉が、シャワー・ブースの扉を兼ねている。
そのため、バスルームの扉を閉じると、バスルームがシャワー室と一体となるが、扉をシャワー室のほうへ閉めると、トイレと洗面台が部屋と一体になってしまう。
シャワー・ブースには曲面のスモーク・ガラスを使っており、それなりお金がかかっている。
一枚の扉を節約したくて、兼用の扉にしたとは思えない。
扉自体もスモーク・ガラスで、おそらく強化ガラスだろうから、それなりの金額はする。
普通に壁を立てれば、もう一枚扉を入れても、はるかに安かっただろう。
ヒルトンやシェラトンはどこの国で泊まっても、あるレベルのサービスを提供する。
アメリカ式のホテルは、世界中でスタンダードをもっている。
ホリデイ・インもアメリカン・スタンダードをもっているはずだから、扉の一枚を省略するのも、本社の決済が必要であろう。
我が国のホテルで、この提案が通っただろうか。
こうしたかったんだという設計者の強烈な意志を感じた。
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台中公園を見る |
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台中へ来るという目的は決まっていたが、きっちりとした予定があるわけではない。
荷物を解くと、まずは夜市に行こうということになった。
ガイドブックによると、もっとも有名な夜市は逢甲夜市らしい。
ホテルのフロントで聞くと、逢甲夜市は遠いという。
近くにも夜市があるからと、そちらを薦めてくれる。
歩いていけるというので、今夜はそちらに行くことにする。
夜市の屋台で、ビールを飲みながら地元の食事をするイメージができあがっている。
いざ出発。
かつては中山公園と呼ばれた台中公園の脇を歩き、大きな駐車場の角を曲がる。
ドッとにぎやかなネオンサインと看板。
おー、夜市にきたと感激。
まず食事と、屋台を探すが、それらしき物が見あたらない。
圧倒的な人出。
若い人ばかりである。
日曜の夜だからだろうか。
とにかくの人出である。
彼(女)らは買い食いもしている。
夜店には食べ物屋もある。
しかし、多くの夜店はお菓子のような物しか売っていない。
香港ならどこにでもある屋台で食事をする風景がない。
店先でおでんの具のような、蒸し物のような物を売っている店を見つけた。
テイクアウトの人も多いが、店の中ではそれを食べさせてくれるらしい。
もっとリッチな食事をしたかったが、とりあえず入ってみる。
入り口で指差ししながら、具をお皿に盛ってもらう。
同じ店の左側には、麺を売っている。
具を指定してドンブリに入れ、すると麺をいれて席まで運んでくれるというシステムだ。
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夜市への入り口の風景 |
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夜市の風景 |
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おでん組は3皿ばかり頼んできた。
ボクは麺入りを頼んだつもりだった。
しかし何と、頼んだドンブリは具だけででてきた。
麺の入っていない五目ラーメンのような感じである。
麺は麺で別に指定しないと、麺抜きになってしまうようだ。
そう言えば、麺といっても、さまざまな種類がある。
太いのも細いのもあるのだ。
それに具だけでも充分に食べられる。
麺を食べるのが主で、具はその味付けというのは、ここでは違うようだ。
とにかく口に入れてみる。
むー、ちょっと甘い。
やっぱり、ビールがなくちゃね、とばかりにビールを頼む。
しかし、しかしである。
ビールはないという返事。
えー! と驚くと、廻りでは誰もビールを飲んでいない。
そんな…。
仕方なしに、おでんもどきをつまむ。
まずい訳じゃないのだけど、これが夕食じゃ充実しない。
ブツブツ言いながら、食べ終わる。
全部食べているから、決してまずかった訳じゃないが、期待が大きかっただけに不完全燃焼である。
充実しない。
夜市を冷やかしながら、ひたすら食事のできる店を探す。
ホテルの近くには火鍋屋があったけとか、思い出しながら捜すのだが、なかなか見つからない。
雑貨屋さんが多くて、食堂は少ない。
これだけ人がでているのに、どうしたことだと不思議に思う。
夜市から離れ、別の方向へ歩き出す。
まるで灯りに誘われる蛾だね、ボクたちは。
明るいほうへ行けば、何かにありつけるだろうと思っているのだから。
小さな鍋をコンロに乗せて、テーブルで食べさせる店があった。
店の中に入って、ぐるぐると見まわす。
何だかよく判らないけど、ビールはあるかと聞くと、ないという返事。
えー、えー!!!! なんでビールがないの!
それじゃ他を捜そう。
しかし、このあたりには、ナベ屋さんしかない。
若いお兄さんがやっている店にいくとビールはないけど、自分が買ってくるという返事。
一同は感激して、この店に決定。
さて何にするか。
看板の写真を指差ししながら、臭臭豆腐を薦めてくれる。
じゃそれを入れて、3種類ほど頼んで、歩道上のテーブルに座る。
もちろん、忘れずにビールを頼んだ。
風が吹いて、やや寒いテーブルで待つこと5分。
近所のコンビニに走ってくれた若者が、ビールをもって登場。
台湾ビールという缶ビールがテーブルに並ぶ。
まずは乾杯である。
やがてナベも運ばれて生きた。
注目の臭臭豆腐である。
たしかに名前どおりに妙な臭いがする。
豆腐ではあるが、舌の上では不思議な味が広がる。
マズイというわけではないが、きわめてクセが強いのだ。
翌日に街を歩くと、臭臭豆腐の看板が目に入る。
おそらく外国人の納豆なのだろう。
ちょっと堅めの豆腐なのだが、それからボクたちのテーブルに登場することはなかった。
それにしても、ここでもビールがないとは、いったい台中の人は食事時にビールを飲まないのか。
不思議な気分で食事を終えた。
帰り道は、台中公園の反対側を歩いて帰る。
缶ビールだけというのが、どうも心残りである。
すでに9時を過ぎた帰り道、スーパーマーケットによって、いろいろと買いこんできた。
ウィスキーを忘れずに買ったのは言うまでもない。
ホテルに帰って、明日の計画を打合せながら、ウィスキーの酔いと共に夜は更けていった。
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