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7 |
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五代は心臓が鼓動しているのを、はっきりと体感した。 首が重かった。 もう一度眼をさますと、ペットをぬけだした。 自分の左腕をめくり、皮膚を露出させると、ゴシゴシとこすりはじめた。 肌が赤くなり熱くなり、そして、痛くなった。そのうち紫になり、白くなった。 白さのなかに、ふたたび嬌声をきいた。 五代は少しすつ自分の感覚をとり戻していた。 ねっとりとした重い湿気を感じて、いる。 ほの暗いなかに、自分の影がうすいと意識のすみで自覚した。 たちこめた霧のなかで自分がとけていく。 力なく立ちあがり、水辺へ近ずいていった。 「ねえ、どこへ行くのよ」 後から女が追いかけてくる。 赤いスカートをはいた弘美である。 スカートのフレーヤーが、ドライアイスのような霧を、あおぐように拡販している。 弘美の身体が軽く見えたが、同時に大きくも見えた。 弘美の身体が河原の砂に点々と足跡を残した。 「ねえ、どこへ行くのよ」 弘美はゆっくりと空中を飛ぶように、軽々と追ってきた。 霧のなかで、弘美の言葉は何度も響いた。 「ねえ、どこへ行くのよ」 ついさっき、五代は弘美と砂のうえで、性交したばかりだった。 射精してしまうと、判らなくなっていた。 「ねえ、どこへ行くのよ」 ・・・・・・違う。違うはずだ・・・・・・ 弘美が高くかかげた両足を、五代の尻にからげてきた。 弘美は折りまげた両足を、五代の尻の後で組み合せた。 弘美は宙ずりになるほどに、五代の身体に自分の局部を抑しつけてきた。 女の首は直角にまがり、脳天が砂に押しつけられた。 白い霧のなかで、白い女の白い尻の肉が白くさえた。 五代はしほんでいく肉片の感覚がなくなった。 五代は悲しかった。 力をこめる女の両足は、しっかり五代をつかんでいる。 肉がふるえる。 そのたびに、女の白い尻についた銀の砂が落ちた。 霧が風にまうと、五代は歩きはじめた。 女の肉体がそれを追った。 ・・・・・・違う。違うはずだ・・・・・・ そう思いながら、五代は判らなかった。 頭の心が冷えた。 空洞と化した。 そこへ白色の霧が流れこんできた。 冷めたい白色の気体がかきまわされると、鈍い痛みに襲われた。 前に弘美が立っいた。五代は腕をあげ、指に力をこめた。 若紫色の霊気が、弘美の肉体からぬけた。 遠くで電車が、カラカラと三角形の鉄橋をわたっていった。 <了> |
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