1995年にソウルを訪れて以来、14年ぶりの再訪である。
前回は1人旅だったが、今回は6人の団体旅行である。
韓国人の友人Aさんが、飛行場に迎えに来てくれ、最後の日まで面倒をみてくれた。
3泊4日。
Aさんに感謝、感謝である。
還暦をすぎた6人の老人が、男女3組でソウルに遊びに行く。
何となくボクが幹事になってしまった。
パック旅行もさがしたが、なかなか適当なものがない。
そこで、飛行機の切符とホテルを別にとることにした。
ホテルは前回の記憶を思いだして、YMCAホテルを候補に決めて、Aさんをつうじて調べてもらった。
YMCAホテルは古いが、旧市街の町歩きには便利な立地である。
レトロな建物も、気に入っていた。
Aさんの電話によると、シングルが5万ウォン、ツインで8万ウォンという。
レトロであっても、抜群のお値打ちである。
しかも、大々的にリニューアルされており、きれいなホテルに変身しているという。
YMCAホテルに予約してもらった。
飛行機の切符は、ネットで捜した。
すると、ずらーっと、たくさん出てくる。
安いものは、2万円以下のものもある。
しかし、安いチケットは成田発で仁川空港着。
しかも夜遅く出発し、早朝に帰国というスケジュールである。
これでは、ソウルでの時間が少ないし、成田や仁川飛行場往復の費用が馬鹿にならない。
小金持ち老人たちの旅行だから、時間を優先し、あまり安さには拘らないことにした。
そこで選んだのが、羽田・金浦空港往復のアシアナ航空である。
これだと、ソウルでの時間がゆったりしており、ソウルで遊ぶ時間が長くとれそうだ。
ネットで切符を買うのは初めてだった。
自分の分だけなら気楽だが、あと5人分。
キイを叩くのには、指が縮んだ。
だって、名前や生年月日、パスポート番号などを叩きまちがえると、飛行機に乗れなくなるって書いてあるのだ。
5人のうち誰かが、飛行機に乗れずに、羽田空港で足止めということになったら、ボクの責任だろう。
そう考えると、自然と指がこわばってしまった。
いつになく緊張して、目を凝らしてモニターを注視して、慎重にキイを叩いた。
入力し終わって、やれやれと思っていると、旅行代理店から性別が違うのではないか、と問い合わせの電話があった。
間違いがあったのだ。
問い合わせのとうりで、女性のはずを男性として入力していたのだ。
指摘されてよかった。
これが羽田空港でわかったら、彼女だけ羽田に残ることになる。
おそらく今後の友人関係は、もはや消滅したであろう。
といった冷や汗をのこして、羽田を出発したのは、3月21日土曜日の昼頃だった。
アシアナの機中ではお昼ご飯もでて、優雅にビールなんて飲んでいた。
飛行機は順調にとんで、2時間ほどで金浦空港についた。
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地下道の映画看板 |
ボクは日本の公安調査庁から、韓国の国軍機務司令部に、北朝鮮のスパイだと売られた身である。
金浦空港では、別室に案内されるのではないかと、韓国への入国には、ちょっと神経質になった。
ボクだけ入国できずに、そのまま国外退去になったらどうしよう。
そんな心配は無用で、無事に入国できた。
やれやれである。
ほかの5人は、ボクの心配などどこ吹く風だった。
ボクは国境を越えることには、いつも神経質になる。
自国民であれば、入国させるのは当然だが、外国人には入国の自由はない。
国家権力のまえでは、外国人はまったく無力なのだ。
好ましくない人間を入国拒否にしても、国家はまったく痛痒を感じない。
外国旅行では、ヒリヒリした感じを味わってきたので、国家や国境には神経質になるのだ。
入国審査さえ済んでしまえば、もう大丈夫。
バッゲジクレームで荷物をとって、税関にすすむ。
韓国では課税対象の申請物がなくても、税関申告書を提出しなければならない。
(帰国時にわかったが、我が国もそうなっていた)未記入だったボクは、引き返してカードに記入する。
しかし、カードを差し出すときには、税関の役人はお喋りに夢中で、こちらにはまったく関心がない。
カードを受け取ろうともしない。
税関申告に該当しない者の税関申請は、これが世界の標準だろう。
書いたカードをそのままもってきても、何の役にも立たないから、近所のカウンターのうえに置いてきた。
税関をでると、Aさんが迎えに出てくれていた。
全員を引き合わせて、紹介する。
6人+Aさんで一塊りになって、階段を下りて地下鉄へと向かう。
やや薄暗い地下道には、動く歩道がある。
飛行機から降りて、ここに至るまでには階段があったり、車椅子の1人旅には厳しいだろう。
リニューアルされたとはいえ、全体に設計が古く、仁川飛行場ができたことがよくわかる。
動く歩道から見える景色は、ちょっと前の新宿サブナードといったところだろうか。
グレーの大理石が壁に張られており、これが暗い印象なのかも知れない。
仁川飛行場を見たかったが、設計の新しい仁川飛行場は、おそらく香港の新空港にも負けないだろう、と思いつつ地下鉄の切符売り場に到着する。
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