第５日目（９月１２日：月）
目が覚めると、もう一度、パソコンのある部屋に行く。
ボストンのホテルの位置を確認する。
どうも、市内から遠そうである。
しかし、予約を入れてしまったし、ネットでキャンセルする方法がよく判らない。
それにもしキャンセルできても、キャンセル料が発生するだろうから、このまま行くことにする。
グレイハウンドでは１０時３０分発のバスに乗るためには、１時間前にバス乗り場に来いという。
地下鉄に乗って、バス停のあるStation Berri-UQAM まで行く。
ちょっと早く着いたので、キオスクで朝ご飯を食べる。
セルフ・サービスのカウンターで、チーズバーガーを頼む。
アラブ系の男が、今日も良いことはないだろうという顔をして、ハンバーガーを焼いている。
チーズバーガーは８分待てという。
オムレツはできるかと聞くと、ノー・プロブレムとの返事。
ではオムレツを作ってくれと頼む。
朝のせいか、客は少ない。
隣のカウンターは開店の準備中である。
厄介なものを頼んだのか、隣では若者が手持ちぶさたに、ずいぶんと長い間待っている。
アメリカでもそうだが、カナダでも良く待たされる。
お客様は神様ではなく、店員のほうが場の支配権を持っている。
また、後ろに大勢の人が並んでいても、自分が納得するまで、延々と話を続けるのは当たり前である。
並んでいる人も、待つのにうんざりしながらも、自分の番になると悠然と構える。
だから、後ろの人は黙って耐えなければならない。
時間はたっぷりあるので、ここではじっくりと待つ。
やがてハンバーガーが焼き上がり、チーズ・バーガーに何を入れるか聞いてくる。
オニオン、トマト、ピクルスなどなど、それらにいちいちイエスかノーと返事をする。
それらをプラスティックのお盆にのせて、キャッシャーの所に行くと会計ができる。
キャッシャーの女性にビールをもらう。
合計で１５ドルである。
グレイ・ハウンドのバスは、飛行機の搭乗と似ている。
１時間前に来て、搭乗を持つのだ。
違うのはすべて自由席で、座席指定というシステムがないことだ。
おそらく客の多寡を見て、増便したり減便したりするのだろう。
ボストン行きのバスは、１５人くらいの客を乗せて、空き席だらけで定刻に出発した。
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往路はバーリントンから来たが、今度はそれを逆に辿る。
国境では全員が荷物を持って下車する。
最初に入国審査官の前に立った若い男性は、バックを開けられて、徹底的に調べられている。
ちょっと緊張。
バスの中を調べてきた入国審査官が、２つのバックを持ってきた。
誰のだという。
バスの中にバックを置いてきたのは、アジア系の老夫婦だった。
英語が分からない感じの彼らは、別室に呼ばれていた。
カナダからアメリカへの再入国で、また指紋を採られるかと思ったが、何ごともなく通過。
バーリントンの飛行場に着く。
そこで何人かが降りて、何人かが乗ってきた。
そして、運転手が変わった。
一路ボストンめざして、出発である。
途中で停まるのは小さな田舎街である。
ホワイト・リバー・ジャンクション、マンチェスターをへて、ボストンの南駅に着いた。
バスはボストンのローガン飛行場まで行くが、我々はここで下車する。
南駅はアムトラック、地下鉄のレッドラインとシルバーラインが発着している。
バス停は別棟だが隣接しており、渡り廊下でつながっている。
バス停から南駅へは迷うことなく行けるが、反対に南駅からバス停へは判りにくい。
南駅の案内でホテルの場所を聞くと、オレンジラインのウェリントン駅が近いという。
地下鉄に乗ろうと、地下に降りていく。
さて、どうやって切符を買ったらいいのだろうか、とキョロキョロする。
発券機の近くには、案内のためだろうか、駅員がたっていた。
聞いてみれば、実に親切である。
１乗車２ドルだが、乗り放題１日券と７日券があるよ、どうするといった具合。
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| 地下鉄７日券 |
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５日ほどボストンにいるんだがと言うと、残念ながら５日券はないんだね、という返事。
これがリズミカルな応答で、とても気持ちが良い。
じゃあ、７日券を買うよと言うと、カードがあるかと聞く。
カードを差しだすと、自分で機械を操作して発券してくれた。
その間、ラップのような会話が続く。
何と気持ち良いノリだろう。
しかし、カードには暗証番号もなくＯＫというのは、おおいに心配だ。
南駅でレッドラインに乗って、１つ隣のダウンタウン・クロッシング駅まで移動。
そこでオレンジラインに乗りかえる。
車内の案内板を見ると、左右のドア上にある案内板が同じ仕様だから、片側は進行方向と反対に掲示されている。
おんぼろの地下鉄が、１５分ほどガタゴトと走って、ウェリントン駅に着く。
ウェリントン駅は郊外の駅で、ボストンのベッドタウンといったらいいだろうか。
駅前には駐車場が広がる。
屋台のホッとドックスタンドがあるだけ、他には商店も何もない。
バス停はあるが、ホテルのほうとは行き先が違う。
近くの高校生に聞けば、１１０番のバスは、１つ手前のサリバン駅から出ているという。
すでに７時を過ぎて、あたり真っ暗である。
タクシーを捜すが、駅員はタクシー乗り場はないと言う返事。
１つ隣のモールデン・センターならタクシーがあるという。
ホントかと確認すると、ホントだと太鼓判を押す。
仕方なしに、また地下鉄に乗る。
通勤客の間を縫って、モールデン・センターの駅前にたつ。
タクシー乗り場は確かにあったが、タクシーがいない。
しかし、すぐにタクシーがやってきた。
Red Roof Inn を知ってるかと聞くと、運転手は知っているよ、１号線の北だろうという。
記憶していた住所と一致した。
やれやれとタクシーに乗り込む。
この運転手が話し好きで、隣にある中華料理屋が最高だという。
あげくの果てには、一緒に行こうと言いだす。
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| ボストンの夕空に飛行機雲 |
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こちらは見知らぬ土地で、夜のタクシーの中。
運転手がRed Roof Inn を知っていると言っても、心細いことこの上ない。
陽気な黒人運転手には、とても付き合える心理状態にはない。
話に相づちを打ちながら、情報収集するだけで精一杯である。
タクシーは住宅街を抜けて、フリーウェイを走る。
こんなに遠くなのだろうか、とちょっと不安。
ずいぶんと走った感じがしたが、着いてみると２４ドルだった。
Red Roof Inn はホテルとモーテルの中間のような建物で、フロントには中年の男性が１人だけ。
無精ヒゲ面で制服など着ていない。
どこから来たと聞くので、モールデン・センターからだと言うと、いくらだったと聞く。
２４ドルと答えると、そんなもんだといった返事だった。
一番近い駅を聞くと、ワンダーランド駅で、１６ドルだという。
何とかチェックインできた。
設備は清潔で文句はない。
さて夕飯だが、１号線の沿線では、歩いていけるドライブインなどない。
近くにダイナーもない。
タクシーの運転手が推薦した、隣の中華料理屋に行く以外に選り好みはできない。
この店、仕立ては中華料理店だが、タイ料理もベトナム料理もある。
店内は広く、大勢の人が食べている。
しかし、ウェイターたちはテレビのフットボール中継に夢中である。
中国人かと聞かれる。
ノー。
韓国人か？ いや日本人だと答える。
最後に日本人かと聞かれるとは、中国人や韓国人が進出したことを伺わせる。
ウェイターに中国人かと聞く。
中国人は無愛想。
決まり切ったことは聞くなという顔。
味のほうはイマイチ。
２人でお酒も飲んで、チップ込みで５０ドルでは文句は言えない。
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