第6日目(9月13日:火)
Red Roof Inn から駅まで歩くのは不可能である。
やっぱりタクシーの世話になる。
ホテルとタクシー会社が契約を結んでおり、ワンダーランド駅へは16ドルという協定らしい。
フロントでタクシーを呼んでもらう。
10分ほど待つと、赤い車体のロイヤルタクシーが来た。
アメリカの車は小型化しているが、タクシーは相変わらずフルサイズのままである。
ワンダーランド駅へと言って、タクシーに乗り込む。
タクシーの運転手は実に好い加減な奴で、16ドルと決まっているからか、自分の知り合いに声をかけるために寄り道している。
運転席からの話が終わったので発車。
ワンダーランド駅はブルーラインの終点である。
地下鉄も、レッドライン、オレンジライン、ブルーラインは、おんぼろさ加減を除けば、我が国と同じ普通の車両である。
床は平らだし、扉は引き戸である。
駅員達はみな親切で、明るくノリ良く対応してくれる。
7日券を買った我々は、これから地下鉄の恩恵をたっぷりと受けることになった。
ブルーライン沿線はヒスパニック系の人が多く、ワンダーランド駅からもヒスパニックが乗り込んできて、車内ではスペイン語が飛びかう。
海岸線を走るブルーラインは、ビーチという名前の駅が2つもある。
この地下鉄の車内にも、進行方向と反対の案内板が掲載されている。
ブルーラインはローガン飛行場の近くを通り、エアーポートという駅がある。
しかし、駅前からシャトル・バスに乗らないと、飛行場には行けない。
シャトル・バスは無料だが、駅と飛行場が接続していないのは不便である。
ガバメント・センター駅でブルーラインから、グリーンラインに乗りかえる。
このグリーンラインというのが見物だった。
もともとは路面電車ではなかったかと思われる。
扉は折り戸だし、ホームが低く、電車に乗り込むのには、ステップを2段上がらなければならない。
しかも、車内には階段状の段差がありながら、車体はステンレス製と新しいのだ。
2両固定連結と3両固定連結の計5両連結で、2両連結部分が連結台車であるのは理解できる。
しかし、3両連結部分の中央車輌は、台車が1つできわめて短い。
その短い車輌の前後に車輌が連結しており、台車は各車輌に1つしかない。
つまり3両の固定連結で、台車が合計3つしかない編成である。
こうした構成だから、急カーブも曲がることができる。
車内から前を見ていると、ほとんど直角にカーブを曲がっていく。
驚くべき地下鉄である。
ところで、この地下鉄に限らず、運転手には女性が多い。
大型バスにも女性の運転手が見られるのは、運転は非力な女性でも充分に務まるのだと思う。
我が国の銀座線でも女性の運転手が2人いると言うが、これからはもっと増えるだろう。
驚いたグリーンラインだが、隣のパークストリート駅で降りる。
今日はボストン観光最大の目玉である独立関係、つまりコモンという公園から出発するフリーダム・トレイルを歩きにいく。
ボストンはアメリカ独立に深く関わった街である。
独立関係の記念碑が至るところにある。
コモン付近の記念碑を説明して廻るツアーがある。
10時半出発のツアーに参加することにする。
まず、観光案内所にいって切符と地図を買う。
そして、公園に戻ると、案内のおじいさんが昔のコスチュームで立っている。
手足が極端に細く、お腹が出ており、まるでおとぎの国から抜け出したようなスタイルだ。
彼は15人くらいの参加者を引き連れて、州庁舎→グラナリー墓地→キングスチャペルなどを説明してまわる。
ジョン・ハンコック、サミュエル・アダムスやボストン虐殺など、口角泡を飛ばして熱く説明してくれる。
アメリカ人なら中学・高校の歴史の時間に習うのだろう。
建国の歴史だから、アメリカ人には馴染みが深いはずである。
外国人は、カナダ人夫婦とオーストラリア人のカップル、それに我々だけ。
カナダ人もアメリカ人の兄弟のようなものだから、アメリカ史には詳しいはずだ。
アメリカ史に馴染みのない我々には、オジサンの話に付いていくのが難しい。
それでも熱演につられて、1時間以上歩きまわった。
最後には拍手が出ると同時に、参加者の全員が1ドルのチップを渡していたのが印象的だった。
まさにチップとはこういう時に渡すものなのだろう。
納得。
もちろんボクも渡したのは言うまでもない。
このツアーはノースマーケットで終わったので、McCormick & Schmick's Seafood
Restaurant で食事をする。
昼食時でちょっと待ったが、テラスに席が取れた。
折角だから、サミュエル・アダムスを飲む。
これが美味しい。
近くのテーブルには、女性のゲイと思われるカップルがいた。
彼女たちは灰汁抜けておりスタイリッシュで、デブの観光客が多い中で実に格好良かった。
陽光の中、ゆっくりと食事をする。
食事を終えると、水族館のほうへと歩く。
ここで市内観光のバス発着所を発見。
シティ・ビューというトロリーツアーバスにのる。
トロリーツアーといっても、電気式のバスではなく、ディーゼル・エンジンの普通のバスである。
窓ガラスもなく、派手に車体に装飾している。
このバスは市内を循環しており、一度チケットを買えば、どこの停留所で降りても良いし、どこで乗っても良い。
見たいところがあったら、そこで降りて見学し、また次のバスに乗ればいいのだ。
それにこのチケットで、ボストン湾のクルーズにも乗れる。
午前中に歩いた場所を巡り、やがてチャールズ河にかかる橋を渡り、対岸へと進んでいく。
ここにはコンスティテューション号が係留されている。
1800年代に活躍した大きな帆船で、アメリカ海軍の管理化にあり、現在でも航行可能なのだそうだ。
我々もここで降りる。
コンスティテューション号はフリーダム・トレイルのコースにも入っている。
入り口では身分証明書をみせると、手の甲にスタンプを押してくれる。
海軍の管轄だというので、空港のような荷物検査がある。
そこを通ると、簡単な博物館とミュージアム・ショップ。
コンスティテューション号への案内付きのツアーがあるが、それは無視して船にのる。
|
|
コンスティテューション号の船内 |
|
|
|
船の中では、昔の水兵服を着た兵士が、観光客相手に懸命に説明している。
3層になった船内は、ハンモックが所狭しと吊られ、今の船からは想像もつかないスパルタンな仕様。
ハンモックのすぐ隣には、大砲がズラッと並んでいる。
まったくの大広間形式で、将官の部屋と作戦室だけが区切られている。
しかも、船室といっても外気とはツウツウなのだ。
台風など中では、たやすく海水が船室に入ってしまう。
これでは寒冷地の航海など、大変だったろう。
ツアーバスを運行する会社は3社あり、他の会社のバスには乗れないが、ほとんど同じコースを走っている。
またツアーバスに乗る。
街のあちこちを巡りながら、出発点に戻ってきた。
幸運にも今日最後のボストン湾のクルーズに間に合った。
ボストンのダウンタウンは、一辺が1キロちょっとの小さな正方形に納まってしまう。
小さな街だが、高層建物が建ちならび、海から見る景色は素晴らしい。
船はアメリカ国旗をなびかせて、静かに進む。
下船すると、乗船時に撮った写真を売っている。
我が国の観光地とまったく同じやり方。
帰りのアムトラックの予約をしに、南駅へと行く。
しかし、17日にバーリントンへ直行する列車はないことがわかる。
途中で乗りかえなければならず、しかも一泊する必要がある。
残念ながら、またグレイ・ハウンドに乗ることになった。
グレイ・ハウンドのカウンターには誰も人がいない。
発券機が3台並んで、そのそばに男性が立っているだけだ。
彼にグレイ・ハウンドの人かと聞くと、その応えが良かった。
「Unfortunately」
素晴らしい返事で、彼は発券機の操作を教えてくれるのだ。
グレイ・ハウンドの切符を買って、地上階に降りてくると、中華街がみえた。
駅の近くで食事のできるところがわからないので、夕食は2晩続きの中華料理になった。
夕べより、ずっと中華料理だったが、大盛りぶりにたじろぐ。
帰りはオレンジラインにのって、モールデン・センター駅で降りる。
ワンダーランド駅のほうが近いのは判っているが、タクシーが拾えないのだ。
それで仕方なしに、モールデン・センター駅で降りている。
タクシーは昨日と同じ運転手だった。
|
|