ボクは3時に仮縫いがある。
しかし、約束の時刻までは、まだ時間がある。
そこで海パンを買おうと思って、スポーツ店を捜した。
いつも使っている海パンが古くなっていたし、YMCAホテルにあるプールを使ってみたかったのだ。
近所にはたくさんスポーツ店はあるが、海パンは売っていない。
海城街(ハーバーシティ)に行けという。
海城街との間は、広いとおりで区画されており、地下道を通らないとわたれない。
仕方なしに、地下へと降りていく。
海城街は、シティというように、とても広い。
案内カウンターがあって、香港人も行き先を尋ねている。
ボクも海パン売り場を聞く。
2階の化粧品売り場の裏側だという。
エスカレーターに乗って、えんえんと歩いていく。
やっと見つけた。
海パン売り場は、隅ほうにひっそりとあって、品数も少ない。
それでもARENAとSPEEDがある。
香港でも、海パン型は少なくなっており、ほとんどがトランクス型である。
少ない中からARENAの海パンと、ゴーグルを買う。
海パンが550香港ドル、ゴーグルが80香港ドルだった。
また地下道をくぐって、北京道路へもどる。
すこし約束の時間に遅れたが、M.K.Loo の店には、Peter と職人さんが待っていてくれた。
ただちに仮縫いが始まる。
しつけ糸の付いたズボンをはき、片腕だけの洋服を着る。
職人さんがまち針をつかいながら、ポケットの位置など希望を聞いてくれる。
ズボンの長さをちょっと伸ばし、腕廻りをちょっと大きくする。
値段を考えると、思った以上のできで、受け取るのが楽しみになった。
見本に渡した背広を受け取り、YMCAホテルへと戻る。
路上で、うしろからボクを呼ぶ声がする。
香港で名前を呼ばれると、なんとも不思議な感じである。
2人のメンバーがスタバでお茶していた。
YMCAホテルで全員集合、コンシェルジェにレストランを推薦してもらって、女人街へと向かう。
意気揚々と地下鉄にのり、女人街のある旺角(モンコック)で下車する。
地下鉄も混んでいたが、旺角も人出が多い。
まるで渋谷の駅前を狭くしたようだ。
すると、その時、メンバーの1人が財布がないと言った。
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空いているときの地下鉄の車内 |
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肩から下げたハンドバックの口が、半分開いていた。
混んだ地下鉄の中で、スリにやられたか!!!
しかし、ホテルに忘れたかも知れないとも言う。
カードが入っていたので、ことは急を要する。
財布を確認するために、2人がただちにYMCAホテルへともどる。
忘れたのであって欲しいと願ったが、ホテルにも財布はなかった。
カードを使用停止にしなければ。
香港のカード事務所に電話するが、ファックス音がするだけで電話が出ない。
お金がかかるのを覚悟して、日本のカード会社へと電話を入れた。
しかし、カードの管理は、マスターとかVISAがやっているのではないらしい。
カードを発行している会社が、カードの管理をしているという。
日本のVISAが、カード発行会社の連絡先を教えてくれた。
なんとか電話が通じて、カードの使用を止めた。
幸いにも、まだ使われた形跡はないと言う。
やれやれである。
外国でトラブルがあると、本当に困る。
まず言葉が通じない。
ホテルだって、警察だって、さして親身になってはくれない。
判らないことだらけの中で、右往左往せざるをえない。
今回は財布だけだったので、大したことはなかったが、パスポートをやられたら大変だった。
ちょっと苦かったが、まあ、これも海外旅行の味の一つだろう。
旺角(モンコック)で待っているメンバーたちと、喫茶店で合流し夕食と言うことになった。
そこでレストランを探したのだが、めざすレストランは旺角東駅にあるという。
旺角と旺角東は、ちょっと離れている。
ぶらぶらと歩いて、旺角東駅に着いたのだが、めざすレストランがない。
土曜日のせいか、どこもみな込んでいる。
仕方なしに、手近な店にはいる。
これが失敗だった。
ファミレスと言ったらいいのだろうか、味の素も使っているようで、大味である。
魚料理を注文しようとすると、1匹じゃなくて2匹にせよと迫ってくる。
生きた魚をビニールの袋にいれて、テーブルまで見せに来たが、1匹にする。
お酒を注文すると、驚いたことに、老酒がないというのだ。
中華料理を食べにいって老酒がないとは、日本料理屋で日本酒がないようなものではないか。
あたりをみまわすと、ビールと赤ワインである。
だれも老酒など飲んでいない。
えー!! と思いながら、老酒はないのかと、ボーイさんに問いつめる。
すると彼は、これまた驚いたことを言った。
ビルの同じ階にスーパーマーケットがあり、そこに老酒があるから買ってこいというのだ。
最初は、冗談かと思った。
しかし、まじ本気だったのだ。
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麻雀荘の入り口 |
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彼はボクを店の前まで連れて行って、スーパーマーケットを指さすではないか。
了解である。
ボクは吹き抜けの抜こうに見えるスーパーマーケットまで走った。
30香港ドル以下の安いものしか並んでいないが、2本ばかり買ってテーブルへと戻る。
この店は、値段もほどほどで、5人前で700香港ドルだから、1人前2000円していないのだ。
値段と味は正比例というが、一同なんとなく納得しない様子のまま、外へ出た。
スカイ・ウォークをとおって、旺角までもどる。
街は煌々と明かりを付けて、みな商売に余念がない。
ネーザンロードへおりる。
あとはブラブラしながら、YMCAホテルまで歩いて戻るつもりだった。
しかし、麻雀荘を発見してしまったのだ。
メンバーの1人がトイレを借りに、とあるビルに入った。
すると、麻雀荘があるではないか。
麻雀荘に意気揚々と入ると、ここは<カジノ>だから、家族麻雀をやるところではないという。
みると、テーブルの中央に、数字を書いた紙が吊る下がっている。
その数字が、テーブルでのレートなのだという。
つまり、素人さん、お断りの店だったのだ。
家族麻雀のできるところはないか、と聞くと、このビルの9階にあると、親切にエレベーターまで案内してくれた。
やっと、たどり着いた麻雀荘では、大歓迎されて、個室へと案内される。
一同、感激である。
さっそくテーブルを囲む。
お茶が運ばれてくる。
ビールはないか、と聞くと、ネイヨーという返事。
これまた、えー!! である。
買ってきてくれと言っても、そういうサービスはしていないと言う。
じゃあ、ボクが外へ買いにいっても良いかと聞くと、OKという返事。
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掛け将棋 |
4人が卓を囲んでいる間、ボクが夜の街にビールを捜しにでかけた。
近所の Seven−Eleven で、ビールを買ってきたが、その途中、面白いものを発見した。
掛け将棋にである。
かつて日本の夜店でもみかけたが、もう我が国ではない。
掛け将棋は、ベトナムはハノイの路上で見たのが最後である。
さすがに、旺角は香港の下町である。
3人の男が、路上で盤を構えて、客を待っている。
感動のあまり、写真を撮らせろと言ったが、頑強に拒否された。
そうだろう。
いろいろな意味で、掛け将棋はデリケートなのだ。
写真を撮らせるのは、難しいとおもう。
ベトナムでも、お金を払って、写真を撮らせてもらった覚えがある。
話をしているうちに、何となくシャッターを押してしまったが、男は別に怒らなかった。
というわけで、香港第2日目の夜は、麻雀でふけていくのであった。
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