1時間後に集合。
今日の午後は、郊外の西バライに行こう。
飛行場の北西にある遺跡だが、人造湖の中央に小さな島があり、その島に残っている。
またトクトクの人となる。国道6号線を西へ向かう。
飛行場入り口を過ぎて、しばらくは知ると右折する。
細い道が北へと延びている。
道がグッと坂になったところで、トクトクが止まった。
トクトクでは非力すぎて、この坂は上れないようだ。
サマイは手前の広場に、トクトクを止める。
あとは湖まで歩く。
道を登り上げると、堤防の上にでた。
目の前に水が見える。
舟が止まっている。
島まで15ドルだという。
ちょっと高いようだが、了承する。
|
|
|
|
エンジン音も高らかに、舟は岸部をはなれた。
スピードを上げると、小島へと向かった。
小島というだけあって、小さな土の塊といった感じ。
それでも遺跡と小屋がみえる。
接岸もかんたん。
土に乗り上げただけだ。
200メートルもあるだろうか。
朽ち果てた石の塀がわずかに遺跡の名残を伝えている。
少女とその弟だろうか、子供が3人と老女が1人いた。
向こうに見える集落に住んでいるとか。
学校が終わったので、お金を稼ぎに来ているのだ。
今日は3組目の観光客だという。
残念ながら、一銭の稼ぎにもならなかったようだ。
舟に乗る。
また市街地に戻る。
ホテルの近くにある民俗文化村に行くことにする。
日本の民家園といったところだろうか。
回遊式となった敷地内には、それぞれの民俗をあらわす家が建っている。
その前では、民族衣装の男女が迎える。
そして、寸劇が始まるのだ。
観客の中から1人、ボランティアを選んで、舞台に上げる。
韓国人の若い女性が選ばれた。
仲間らしい人たちから、どっと笑い声がおき、他からも励ましのヤジが飛ぶ。
なにせ韓国人旅行者は多い。
言葉が通じれば、笑いもおきようと言うものだ。
王女様役で、照れながらも、なかなか堂々と王様の脇に立っている。
クジャクが登場したり、ビジュアルにも意を用いている。
さまざまな国からの観光客がいるから、話はいたって簡単。
身ぶりだけで判るように仕立ててある。
20分くらいだろうか。盛大な拍手のうちに演劇が終わる。
観光客は次の民家に移動していく。
すると、役者さん達も、次の舞台へと移動するのだ。
同じ役者さんが、次の舞台では違う役で登場する。
すべて観客参加型である。
あちこちに散在した民家を、次々に移動しながら、あたらしい舞台が演じられていく。
最後には、生きた牛が登場した。
すでにあたり真っ暗。
ほとんど外灯のない、園内を出口のほうへと歩く。
足元が辛うじて見えるだけだが、舗装してあるので危険は感じない。
ネオンが見えて、素朴ながら、貴重な娯楽なのだろう。
カンボジアを知るのは良いが、2度目はもう足を運ばないだろう。
ディズニーランドなどを見ているボクたちには、なんともレトロな民俗文化村だった。
ホテルが近いので、サマイはもう帰してしまった。
夕食を食べたいのだが、国道6号線に面してはレストランがない。
民俗文化村に附属したレストランはあったが、ビュッフェ・スタイルで1人12ドルだという。
学校の講堂のようなところで食事をするのか、と躊躇した。
今夜は、ホテルで食事をすることにした。
歩道をとぼとぼと歩いて、ホテルに帰る。
道は暗い。
歩くのには不自由はしないが、足元に注意しないと、何があるか判らない。
それでもホテルまで10分くらいだったから、ノンビリと歩いた。
途中での話。
政府の高官のパーティがあるらしく、軍の車が、といってもランクルといった4輪駆動車ばかりが、ずらっと歩道に駐車している。
その近くには、屈強で目つきの鋭い男たちが、トランシーバーを片手にたむろしている。
途上国というのは、どうして政府高官の力がこんなに強いのだろうか。
先進国の政府のほうがもちろん強力だが、こんなに見え見えの権力行使はしない。
この集まり方を見ていると、とある政府高官の個人的な集まりのような感じで、公私混同っていうのじゃないだろうか。
そんな想像をしながら、歩道に乗り上げているランクルの脇をすりぬけた。
ホテルに戻り、レストランに行く。日本語のできる女性が対応してくれる。
しかし、いかにも押しつけ的なのだ。
まず、入り口際のテーブルを指定する。
トクトクは責任持てないから、タクシーを使えと言ったときと同じように、客を指導するつもりなのだ。
入り口際のテーブルは断って、奥の窓際のテーブルへとすすむ。
黒服のボーイさんが、素早くこちらの意図を汲んで、先に立って案内してくれる。
テーブルにつくと、女性がいろいろと解説を始める。
それがじつに押しつけがましい。
あたかも無知な子供に指示するような態度なのだ。
悪意があるのではない。
それはわかる。
しかし、こちらは日本語しかできず、ボクたちは彼女を通してしか、意志の疎通ができないかの対応なのだ。
ボーイさんは押しつけないで、こちらの希望を聞こうとする。
だから、ボーイさんと英語でやり取りしたほうが、はるかにスムーズに話が進む。
食前にビールを頼んだら、一度に2本も出てきてしまった。
大瓶かと確認されたので、そうだと答えた。
彼女は1人がそれぞれ1本の大瓶ビールを飲むと思ったのだろうか。
ここで、こちらも切れてしまい、以降、ボーイさんだけが対応してくれるようになった。
今までの日本人観光客との対応から、彼女は彼女なりに学習してきたのだろう。
そして、現在の彼女の対応が、日本人には最適だという結論になったに違いない。
日本人達は自分の希望を言わないで、ガイドやホテルの人たちの言うとおりに行動している。
だから、彼女は自分の意見を強引に押しつけるのだ。
そうしないと、日本人の集団を統率できないのだろう。
|
|