現在の都市は、車が通れるくらいには道幅が広い。しかし、この城壁の中に広がる市街地は、手を伸ばせば届くくらいの道幅である。3〜4階建ての建物が
ギッシリと建ちならんでいる。ほんの少し残った空き地には、いまも建築している人がいる。車や機械が入らないから、コンクリートも手練りである。
しかし、階段の美しさはヨーロッパ人のものだ。何気ない階段にも、美しい手摺りがついている。 |
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砂漠の真ん中に生まれてしまえば遊牧民になるように、この街に生まれたら隣近所とツーツーで暮らしていくのだろう。こんなに狭い場所で子供時代を過ごせば、近所の人たちには全部知られてしまうに違いない。思春期を迎える頃には、息がつまるような気分に襲われるだろう。自我の目覚めには目をつむって近代人 になるのを諦めて、郷土愛に暮らすようになるのは何歳くらいからだろうか。 |