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「あの赤ちゃんね、お父さんが出てきたんだって」 と言った。 「そうなんですか」 「お父さんに引き取られていったって、知らせがあったよ」 「なぜ、あんな事件になったのか分かりましたか」 「旦那さんは単身赴任で、外国へ行っていたらしいんだけれどね、短期の予定が長引いたんだって」 「それで」 「仕事の都合で帰れなかったらしいんだ。国際電話で知らされて、慌てて帰国したんだって。こうなっていたことを知って、信じられないって。すごいショックだったらしいよ」 「そうでしょうね」 「奥さんの遺骨と、赤ちゃんを大事に抱いて帰ったそうだよ」 「そうですか」 「あの赤ちゃんも、ほんとうのお父さんのところへ帰れて良かったね。やっぱり血のつながった親子が一番だからね」 神田はそう言った。 臨月の妻をおいて、海外へ単身赴任していた男性。 その男性が、1人で子育て出来るだろうか。 小さな子供を抱えて、これからお父さんはどうしていくのだろうか。 そこで育つ子供はどうなるんだろうか。 そう考えると、山本恵子はなんだか心が静まらなかった。 <了> |
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