ジャンピー     原作・脚本  匠 雅音
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S:41 大蔵省○○局、局長室。
○○銀行の頭取  最近は、銀行に対する風当たりがきつくて、かないませんわ。
財務局長  いやまったく。我々も同様ですから。(笑い)
警察庁の長官が入ってくる。
財務局長  わざわざ、お越し頂き恐縮です。
こちらは○○銀行頭取の○○さんです。
長官  警察庁の○○です。
○○銀行の頭取  本日伺ったのは、はなはな面目ない話なんですが…。
今日、香港上海銀行から、○○ドル、日本円にして1億円の資金請求があ りまして。
 しかし、当行の記録には、それに該当する取引がないのです。
とりあえず、ホンシャンには決済しましたが、どうもコンピューターがやられたようなのです。
局長  コンピューターを使った犯罪が、今後多発しそうなので、長官にお越 し願ったんですよ。
○○銀行の頭取  当行のコンピューターは、三重のバリヤーを持っているのですが、それを破って外部から侵入し、コンピューターを操作した形跡がありました。
長官  コンピューター犯罪ですか。 この種の犯罪は、立証が困難でして我々も、今研究中なのですが…。
また、予防もほとんど手がうてないのが現状なのです。
見回り警官を増やしても、これには役に立ちませんから。
○○銀行の頭取  たしかに、お話は判ります。しかし、オンラインを止めるわけにはいきませんから…。
なにぶん、銀行の信用にかかわりますので、この件はまだ内密に願います。
今日は、とりあえず、ご報告まで。
長官  判りました。しかし、お話をお聞きした以上、当方も内密で捜査を開始します。
S:42 西川良太、轢き逃げ事故の現場にたたずむ。現場付近を歩いて、何度か往復する。
S:43 大野陽子が昨日、松井潤一郎を跳ねた現場をとおる。通り過ぎてしばらくいって車を止め、時計を見る。7時。独り言で
大野陽子  昨日ここをとおったのは、たしか九時頃だったわ。新聞の記事とは、時間が違うわ。
西川良太が、新聞を見せながら、大野陽子の車の窓ガラスを叩く。
西川良太  ちょっと、お聞きしたいんですが?
大野陽子、驚く。
大野陽子  何ですか。私は、轢き逃げなんかしてません。
西川良太  そりゃわかってますよ、轢き逃げについて、何か知りませんかって、聞 いているんですけど。
大野陽子、対応がぎこちない。
大野陽子  ししりません。
西川良太  (のんびりと)毎日ここを通るんですか?
大野陽子  急いでますから。
大野陽子、車を走り出す。西川良太は、首をひねる。
物陰から、大野陽子の車を見ている森光太郎がいる。
大野陽子の車は走り去る。
S:44  翌朝、大野陽子の職場の電話がなる。
電話(森光太郎)  人を跳ねれば、それでも気になったか。犯人は、必ず現場にあらわ れるからな。
大野陽子  あなたは誰?誰ですか?
電話(森光太郎)  警察が動き出しているからな。せいぜい気をつけることだな。また 電話する。
職場の廊下に警官が見える。大野陽子、緊張する。
しかし、警官は大野陽子には無関心で立ち去る。
S:45  大野陽子の自宅、ひとりで。
大野陽子  私は悪いことなんて、なにもしてないのに。
よりによって、なんで私にぶつかるのよ。
でも私が殺したんじゃないわ。時間が違うもの、また他の人に跳ねられたんだわ。
きっと。不幸な人なのよ。
ああ、でも、私かも知れない。警察に自首しようかな。
でもなぜ、すぐ届けなかったといわれるだろうな。届けようと思ったん だけれど、あの人が元気にいっちゃたから、届けなかったのよ。
あの人が悪いのよ。
朝になって死んでいますなんて。でも、私はもう犯罪者なんだわ。殺人犯かも。
大野陽子、泣き崩れる。
S:46 (夢のなか)深夜、雨。
大野陽子が車を運転して、事故現場を通る。
松井潤一郎が、道路中央に傘もささずに立っている。
大野陽子は急ブレーキをかけるが、ブレーキがまったくきかず、車のスピードが変わら ない。止まらない車に緊張したところで、夢からさめる。
大野陽子 ああー、夢か。よかった。
S:47 翌朝、職場の廊下で、元気のない大野陽子が石川直樹と黙ってすれ違う。い つもと違う様子に、石川は首をひねる。外は雨。
S:48  大野陽子の机のまわり。
林 哲也  返しにきました。5万円と3千円です。確かめて下さい。
大野陽子  約束より早いんじゃない。林くん。
林 哲也  勝ったんですよ。自転車で。また、増えたらたまりませんからね。
大野陽子  (力なく)まだ、よかったのに。
林 哲也  どうしたんです、元気がないじゃないですか。

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