ジャンピー     原作・脚本  匠 雅音
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S:74 夜。大野陽子の自宅。ジャックダニエルをはさんで、グラス二つ。
大野陽子  また、電話があったのよ。
林 哲也  誰から? 
大野陽子  きまっているでしょ。あいつよ。
林 哲也  あいつっていわれても…。
大野陽子  私の轢き逃げを見たって奴よ。あいつは、私がひき殺したっていうのよ。私が、ひき殺したところを見たっていうのよ。
林 哲也  でも、大野さんが接触した男は、元気だったんでしょう。
大野さんが、殺したんじゃないですよ。
大野陽子  あの時、死んだんじゃないわ。でも、何で死んだのかな?
やっぱり、あの事故がもとで死んだのかな?
林 哲也  そういう可能性もなくはないけど。
大野陽子  えー! ちょっとへんなこといわないでよ。でも、そうすると、私が、殺人犯ということになるのかな? 
私は、人 なんか殺してないわよ。
S:75 大野陽子の自宅。大野陽子は、林哲也のとなりに眠る。ずれたバスローブから大野陽子の太股が見える。林哲也は、悶々たる感情を押さえている。
S:76 翌朝、大野陽子の部屋に朝日が差し込む。2人が、目がさめる。
S:77 大野陽子のアパートから、林哲也と大野陽子がでてくる。そこへ、小松原章と、西川良太があらわれる。
小松原章  おはよう。
林 哲也  誰だ、おまえは!
小松原章  潤一郎からかっさらったものを、こちらに返して貰いましょうか。そちらがが持っていても、役にたつものではありませんからね。
林 哲也  なに、いってんだ。とんでもないもの作りやがって。銀行の金がひきだせたら…
小松原章  知ってしまったようですね。
林 哲也  うっ…。
小松原章  賢いお兄さんだね。
林 哲也  あのくらいのシステムは、俺だって簡単に判るんだぜ。
西川良太  簡単に判ったら、簡単に死んでもろうか。
西川良太が、切りかかる。林哲也と大野陽子が逃げ回る。
S:78  林哲也と大野陽子が、息も絶え絶えに逃げてくる。
大野陽子  なんなのよ、あいつらは。
林 哲也  これですよ。これ。これをねらっているんですよ。
林哲也は、カバンからCDを出す。
大野陽子  なに、それ?
林 哲也  だからいったでしょ。銀行からお金を引き出すプログラムですよ。
大野陽子  どうやって?
林 哲也  とにかく、これで、お金が作れるんですよ。
大野陽子  わたしにも、つくれる?
林 哲也  なにをいっているんですか。
大野陽子  返せばよかったかな。
林 哲也  返すだけじゃ、すまなかったでしょう。
S:79 駅ビルのなか、小松原章と、西川良太が追いかけてくる。
林 哲也  きたきた。
大野陽子  ひゃー!
林 哲也  早く早く。
大野陽子  靴が脱げたわ。
林 哲也  靴が脱げた? それで死ぬわけじゃない。早く逃げて。
大野陽子  あの靴は、一番気にいっていたのよ。
林 哲也  よし、ここに隠れよう。
遅刻だな、課長になんていおうか。
林 哲也は、携帯をとりだすが、かけない。
S:80 衝立の後ろに、林 哲也と、大野陽子が隠れている。そこから脱ぎ捨てた靴 が見えている。しかし、小松原章と西川良太がうろついている。
S:81 林哲也と、大野陽子が隠れている場所から、靴を指さして。
大野陽子  靴よ、靴。
林 哲也  どうぞ、あそこにありますから。取ってきてもいいですよ。
大野陽子  取れるわけないでしょ、あいつらがいるんだから。何いっているのよ、林くん。
林 哲也、棒切れで靴を取る
大野陽子  やった。すごい、林くん。
大野陽子、林 哲也に抱きつく。
S:82  小松原章と西川良太に居所がばれる。林 哲也と大野陽子は、逃げ出す。
S:83  大野陽子は、靴を両手に持っている。ごみ箱の後ろに、再び隠れる。
S:84  ごみ箱のほうに、小松原章と、西川良太が歩いてくる。林哲也と、大野陽子は、緊張する。
小松原章  まだ、このちかくにいるはずだ。
西川良太  すばっしこいやつらだ。
小松原章  おまえはあっちへいけ、俺はこっちへ行ってみる。
西川良太と、小松原章は、大野陽子と林哲也のまえで、左右に分かれる。
S:85 そのすきに、林哲也と大野陽子は、駅の改札口を駆け抜け、電車に飛び乗る。
追ってきた小松原章と、西川良太は、電車に乗れない。
S:86 車内から、取り残された小松原章と、西川良太をみる。

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