僕の泊まるホテル リットンは、サダル・ストリートにあった。
僕は荷物をもって車から降りる。
しかし、男は助手席から降りてこない。
彼は運転手にお金を払っていた。 空港からの交通費も込みの料金で日本から予約したが、こうして現金がやりとりされる光景は予想していなかった。
ホテルに入ると、同じことが繰 り返された。
1泊2、000ルピー近いらしい僕の宿泊費を、目の前で現金で払っているのである。
クーポンとか後日精算というシステムはないのだろうか。
僕をホテルまで案内してくれた男は、もし明日、街の案内が必要なら、ここに電話をしてくれといって電話番号を書いた。
何でも役に立つからといって、握手を して帰っていった。
僕はパスポートを出して、チェックイン。そして、両替する。
100ドル札を1枚だすと、3、567ルピー戻ってきた。
外貨が自由化されてないインドでは、ドル紙幣を受け取るときは、お札の番号を控えなければならないらしい。
ホテルの人は両替票に、パスポートの番号と並ん で、ドル紙幣の番号も書き込んだ。
たった1枚の100ドル札が、1センチくらいの札束になった。
1円が3.5ルピーくらいだろうか。
300ルピーとこまか いお金だけポケットに入れ、残りはリックの中へ入れる。
立派な体格のボーイ、といっても50才くらいの色の黒い男が、僕の小さな荷物をもって先に歩き出した。
サンセット・バーの前にある年代物のエレベーターに乗る。
G→1→2と、エレベーターはのぼる。
2で降りる。
日本風に言えば三階である。
工事中の部屋の前を通り、部屋に入る。
彼は一通り部屋の説明をして、扉の前にたつ。
チップを待っている。1ルピー硬貨を渡した。
不足顔であるが、貨幣価値の判らない僕は、有り難うと笑顔で扉に手をかけた。
彼はあきらめて部屋をでていった。
15畳くらいの部屋に、幅の狭いベットが2本。
天井にくるくるのファン。
騒々しい音をたてているウインドウ型のクーラー。
テレビも冷蔵庫もある。
バスタオ ルもあった。
室内にトイレ・シャワーもある。
そのトイレは洋式で、トイレット・ペーパーがあったし、石鹸もあった。
ホテル リットンは、堅い予備のトイ レットペーパーが、2巻きも用意された立派なホテルだった。
|
|